「ボンカレー」がじゃがいも・玉ねぎ・にんじんの国産化にこだわったワケ
2016年2月、「ボンカレーゴールド」の具材をすべて国産野菜に切り替え、「ボンカレー」の主要商品すべてが「国産じゃがいも・玉ねぎ・にんじん使用」になりました。大塚食品でボンカレーのマーケティングを担当する金子忠晴に、国産野菜化に踏み切った理由と、どのように実現にこぎ着けたのかを聞きました。
理念にある「美味」は、「ボンカレー」発売以来、新しい商品を出し、個々の商品についての改良を重ね、ずっと追求し続けていることです。さらに、電子レンジ対応を実現することで、より生活者のお役に立つ簡便性についても対応しています。
次に、理念にある「安全、安心」では、もちろん万全な衛生管理体制を作っています。また、じゃがいもの芽取りを手作業で行っていますが、これは食品の安全性に加えて、人が作っている安心感と手作り感にも通じることです。
ただ、レトルト食品全般に言えることですが、保存料を使っているのではないかといった誤解があり、そうした「安全、安心」に関する間違ったイメージが積極的な利用を妨げている面があります。
そこで、さらに「安全、安心」を感じていただける行動が必要だと考えている中、原材料へのこだわりを強めることが重要だと判断しました。これが、具材野菜の国産化ということです。
最近、小売業や外食業でも「国産野菜使用」を訴えている例が増えています。それは、生活者が国産野菜を選びたいと考えている結果と言えます。その生活者の要求に、「ボンカレー」も応えるということです。
金子:実は、玉ねぎはもともと国産中心だったのですが、じゃがいもとにんじんも、国産を確実に確保していく体制作りが必要です。確かにこれは、一筋縄ではいかないことでした。
「ボンカレー」の年間販売量は相当なものですから、まずそれに合う量を安定して調達する必要があります。農産物の出来不出来は、どうしても天候に左右されるため、何かが起きても確保できる仕組み作りは簡単ではありません。万一調達できないということになれば、国産野菜と表示したパッケージも使えなくなる。後に引けない話です。
そこで、調達担当から農協や生産者と話しをしたわけですが、幸い国内生産者サイドは協力してくれるように動いてくれました。しかしながら、2016年は観測史上初めて北海道に4つの台風が上陸するという事態も起き、正直ハラハラすることはありました。

企業理念に沿った取り組みを加速させる
——「ボンカレー」の主要商品のすべてが「国産じゃがいも・玉ねぎ・にんじん使用」になりましたが、その狙いを教えていただけますか。
金子:「食は心にはじまり『美味、安全、安心、健康』を創る」というのが、大塚食品の理念です。これは、どの商品でも貫いていく考え方。そこで、「ボンカレー」でさらにこれを確実にするために、今何ができるかと考えた結果が、具材野菜の国産化でした。
「安定確保」と「コストアップ」それぞれに対応
——とは言え、具材野菜のすべてを国産でまかなうというのは、食品メーカーとしては容易なことではないように思います。

——農産物は、一般的に外国産のほうが安い傾向がありますが、国産野菜に切り替えることでコストアップになったのではないでしょうか。
金子:それはその通りで、原料コストはアップしました。それに対して、例えば1袋当たりの内容量を減らすという対応方法もあったと思いますが、当社としてはそうしたやり方は選んでいません。物流の改善など他の部分の工夫で、個別のコストアップを全体の中で吸収しています。 また、他にも解決すべき点はありました。国産のじゃがいも、にんじん、玉ねぎと言っても、産地や時期ごとに、品種も違い、味などの仕上がりの状態も違います。それらを仕入れて使いながら、出来上がった「ボンカレー」の味は、いつもと変わらぬ美味しさを実現する必要があります。つまり、工場の生産技術も問われる取り組みだったわけです。——ということは、国産野菜を使うことで「ボンカレー」の味は変わったのでしょうか。
国産化する前と比べて、全く同じ味ではありません。よりおいしくなりました。「ボンカレー」の味の特徴の一つは、丁寧に炒めた玉ねぎが生み出す風味なのですが、これを強調してグレードアップした感じが出ていると思います。 やはり、国産野菜ということで安心していただくだけでなく、「この味が好き」という形で繰り返し買っていただける商品を目指しています。「ボンカレーなら安心」と思ってもらえるように
